TASSが、将来の供給部品数の増加やサポート国の増加を見込んで効率化の活路を求めたのが、ヤマトグループが提供する国際宅急便などのグローバルソリューションだった。その要となるのが沖縄・那覇空港に隣接する国際ロジスティクスセンター内に設けられた「パーツセンター」である。
ここから那覇空港を深夜に発つ貨物便を使うことで、世界各国へパーツを届けるリードタイムを、成田空港を利用した場合よりも2日短縮。大幅なスピード向上を実現した。
TASSでは、「パーツセンター」内に海外20数カ国向けの紙幣処理機用ならびに郵便自動区分機用保守パーツを確保している。その部品数は約3300種、11万4000個におよぶ。
海外の保守会社から依頼された部品は、TASS川崎本社にある海外営業部から「パーツセンター」に電子メールで出荷指示がなされ、ヤマトグループが部品のピッキングと梱包、出荷伝票の作成、通関などを一貫して行い出荷する。到着空港でもヤマトグループが輸入通関業務や配送を引き継ぐ(一部、現地事業者の利用もある)。
かつては海外営業部から倉庫へ出荷の2日前までに注文を出す必要があった。現在ではアジアの場合、出荷当日の夕方までに注文がなされれば翌日の朝には現地に到着することも可能だ。
「那覇空港の税関の迅速な対応もあり、お届けできるまでの時間は大幅に短縮され、各地の保守担当会社にも評価されています。なにしろ迅速な対応ほどお客様の信頼を生み出すものはないのですから」と、滝澤社長はスピード向上の要因とその効果を語る。
TASSがヤマトグループのソリューションに期待をかけたのは、時間の短縮だけではない。まず輸送品質。一口にパーツといっても電子基板のような慎重な扱いが必要なユニット部品もあり、「壊さないサービス品質」(滝澤社長)が求められる。その点、ヤマトグループの輸送品質は、サービスを利用すれば利用するほどその信頼性を確認できるという。
コスト削減効果も大きい。TASSでは、ソリューションの活用に当たり、ヤマトグループとともに詳細なコストシミュレーションを行った。国ごと・部品ごとにさまざまな配送パターンを想定し、さらに税関手続きの時間などもコストとして勘案した。
「成田空港や羽田空港は、出荷される荷物が多く、税関が非常に忙しい。しかも、どうしても小口荷物は後回しになりがちです。この時間コストも無視できませんでした。しかし沖縄であれば、アジアに近く税関手続きもスムーズで、効率のよい供給体制を築くことができます。利用してみて、サイズが小さくて届ける部品数も少ないほどソリューションを利用するコスト効果が大きいことがわかってきました。これはお客様への迅速で機動的な対応というサービス向上にも資するものだと思います」と、滝澤社長はシミュレーション結果を分析する。
「パーツセンター」へは、神奈川県川崎市にあるTASSの倉庫から定期的に部品が補充されている。部品の生産は、これまではすべて国内で行われていたが、一部が海外の部品メーカーに委託されるようにもなった。将来的には、メーカーから直接、「パーツセンター」に納品する仕組みも検討されている。